すべての学びを保障する無償教育と給付型学生支援への根本的転換を求める声明

すべての学びを保障する無償教育と給付型学生支援への根本的転換を求める声明

学生支援緊急給付金給付事業」の創設にあたって
すべての学びを保障する無償教育と給付型学生支援への根本的転換を求める声明

2020年5月22日

国民のための奨学金制度の拡充をめざし
無償教育をすすめる会 (奨学金の会)
会長 三輪 定宣(千葉大学名誉教授)

 新型コロナウイルス感染防止のための政府・自治体による一斉休校、外出自粛などの要請により、学生の生活困難・修学困難被害は日々深刻化している。

全国大学生協連が4月に行った約3万5000人の学生に対する調査によると、新型コロナウイルスの影響で「アルバイト収入が減少」が42.2%。「今後の経済状況について不安」は65.7%に上った。学生団体「高等教育無償化プロジェクト」が4月30日に発表したアンケート調査によると、コロナ禍による経済被害により5人に1人の学生が「学校を辞めることを考えている」と回答した。これは日本の学問教育を崩壊させるものであり、政府の対策不足による人災である。

2020年4月10日、私たちは「新型コロナウイルス感染対策にかかわる学習権保障の経済的支援策に関する緊急要請書」を文部科学大臣に提出し、国会議員に届けてきた。

しかし、政府は4月30日に成立させた2020年度補正予算においても授業料減免費用は7億円のみで個別大学の自助努力にまかせ、家計急変に対応した大学等修学支援制度は支援対象学生の成績要件緩和等に留まるなど、根本的な拡充が図られることはなく学生の困難を拡大させた。

こうした事態に全国の学生が署名運動に立ち上がり、全学生の一律学費半減と、一人当たり10万円の支給を求める運動は200校以上に広がった。また、各大学も学生支援の必要性を受け止め給付金支給や学校納付金の期限猶予などの措置が拡大している。しかし、財政状況が厳しい学校にこうした支援を期待することはできず、政府の早急な支援策が要請されていた。

その中で5月19日、政府は新型コロナウイルス感染拡大で困窮する学生への現金給付制度の創設を閣議決定した。対象者は約43万人、1人当たりの額は住民税非課税世帯が20万円、それ以外は10万円。予算総額は530億円で、予備費が財源とされている。

これは、この間の学生の訴えやそれに賛同する多くの国民の声が政治を動かした結果であり、大いに歓迎する。しかし、前進ではあるものの支給対象が全学生の約1割に限定されていること。留学生には成績要件が付けられていること。「アルバイトの収入減」による給付には①自宅外で生活、②多額の仕送りを受けていない等の条件が付くこと。など選定基準が支援の障害になっている。

いま、多くの学生が不安に感じている経済状況から、すべての学生の学習権を守る制度をつくるためには、その中からより困難な1割を選別する制度ではなく、すべての学生が一律に支えられる制度が求められている。

そもそも学生の困難の背景には、1970年代以降の政権による教育「受益者負担」論に基づく髙学費私費負担政策がある。1990年代後半より、先進国の中で日本だけが労働者の賃金が低下し続けているなかで、家計が負えなくなった学費負担を学生自身がアルバイトと学生ローン(貸与型奨学金制度)で補てんしている。2016年度集計の「学生生活調査」によれば、アルバイトをしている大学生は83.6%にのぼり、その内、「家計からの給付のみでは修学不自由・困難及び給付なし」は36%を占めている。そして大学生の37%が日本学生支援機構の奨学金を利用し、そのほとんどは返還義務のあるローンとなっている。つまりこの国の高等教育を支えているのは学生の労働と借金である。

今回のコロナ禍は学生が経済活動の手段を奪われるだけでなく、学生ローン返済者に対しても大きな被害が及んでいる。

日本の学生支援制度は2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災など、大災害の度に教育の「受益者負担」政策に対する見直しが求められ、2018年度より大学等の給付奨学金制度が本格実施されてきている。

今日の状況は半世紀続いた日本の高学費政策を転換する好機であり、日本政府が2012年9月に留保撤回した国際人権A規約13条の無償教育条項の全面的な実現をいまこそ決断すべきである。

当面、コロナ禍における日本の高等教育学習権保障のために下記の予算措置を行うよう改めて要求するものである。

1、すべての学生・大学院生・留学生を対象に一年間授業料一律半額免除を行うこと。

2、コロナ禍による経済被害について申請した学生・大学院生、留学生に対し月10万円の給付奨学金を1年間支給すること。

3、奨学金返還者に対する請求を1年間止めること。その期間は無条件に返還猶予期間とし、通算の返還猶予期間にカウントしないこと。

以上

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