「中等教育及び高等教育の漸進的無償化立法を求める会」の設立総会を終えて

                  重本直利(本会代表世話人、大学評価学会顧問)

 2018年10月27日、京都駅前のアバンティ9階の龍谷大学響都ホールで、「中等教育及び高等教育の漸進的無償化立法を求める会」の設立総会が開催され、会の創設趣旨および会則の提案、そして質疑応答がなされ、承認されました。また、日本弁護士連合会人権擁護委員会への「人権救済申立書」の提案がなされ、承認されました。

 「漸進的無償化」の取り組みについては、2004年3月に大学評価学会が設立され、同時に学会内に国連社会権委員会2006年問題特別委員会が設置されたことが想い起されます。同委員会は、社会権規約第13条2項の「漸進的無償化」について、その留保撤回の取り組みを含め大学評価の根幹にかかわる課題として位置づけ、外務省、文部科学省などの関係機関に要請を行いました。また、当時、同委員会・委員長であった田中昌人先生(故人)と共に要請行動を行ったこと、先生の絶筆『日本の高学費をどうするか』を想い起しました。2007年7月24日には、大学評価学会・2006年問題特別委員会として、外務省(担当:総合外交政策局人権人道課)に「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約・政府報告に関する意見書」を提出しました。2012年9月11日に、当時の民主党政権は、上記の留保撤回を国連に通知し批准されることになりました。しかし、国内の法整備が行われないままでの留保撤回であり、その後の自民党政権おいても法整備は遅々として進んでいないまま今日を迎えています。これまでのわれわれの取り組みも立法化に向けては進んでおらず、遅きに失した感が否めませんが、今回、本会の設立総会を迎えたことで「漸進的無償化」に向けての運動の大きな契機になることを願っています。

 特に、「漸進的無償化」に関して、2018年5月31日までに国連社会権規約委員会への日本政府からの定期報告となっていますが、未だ報告はなされていません。かつての「2006年問題」で取り組んだ際の「早急に具体的な協議および措置を講ずることを求めます」と同様に、「2018年問題」として取り組みたいと思います。国連社会権規約委員会は、規約の第1条から15条までの法律上および事実上の実施に関する情報、規約上の権利の実現に影響する最近の進展についての具体的記載を求めています。しかし、具体的な取組・実績のない日本政府はこの報告を怠っています。国連社会権規約委員会の日本政府への要請に呼応して、立法化の取り組みを進めたいと思います。

 私がかつて所属していた龍谷大学では、この留保撤回(批准)後に学費の値上げが行われました。今、国立大学法人を含め学費値上げの動きがあり、「漸進的無償化」規約を踏みにじり逆行する事態が進行しようとしています。大学人の不見識を問わざるをえません。「漸進的無償化」の立法化は喫緊の課題と言えます。学ぶ意思・能力があるにも関わらず、主に経済的な負担のために進学を断念したり、あるいは中途退学を余儀なくされたり、さらに修学のための費用を得るためのアルバイト等により学ぶ時間を奪われるなど、通常あるいは最低限の学生生活を送ることができない深刻な事態が広がっています。学資ローン化した「利子付奨学金」などの負債の返済に困難を抱える事態もより深刻化さを増しています。

 こうした事態の打開のため、日弁連人権擁護委員会への申し立てとともに、また「2018年問題」に取り組みつつ、「漸進的無償化」の立法化の実現に向けての運動を進めていきたいと思います。